雑記 spoofing 忍者ブログ
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クジラアイスの話のつづき
 



○○○、わらってね。


10:30、まだお昼前。


学校の廊下に模造紙がひろがってる。
青いプロッキーがころがってる。
12:30に戻ってきます、と書いてある。
裏移りしない優秀な水性ペンで書いてある文字は、
表面がコーティングされてつるつる光ってる。


ついに、あの変態英語教師を追いかけなきゃいけない時がきたみたいで。
自然と顔が笑っちゃうよ。


「3階の女子トイレ、へこみまくった金属のマリア様に、
私をプールにつれてって、ってお祈りしたら
青戸の舞台衣装屋さんにおっこちる。」
そのルートを開く鍵をみつけたのは○○○だったね。
パソコン室にこもってうんうん唸ってた私の横にすとんと座って、
計算用紙と鉛筆でさらさらと方程式を解いて見せた。


「衣装屋さんについたら、ショッピングモール側から抜けて、
右に折れてから平成ギャラリーに入る」、
何回も自分に言い聞かせたからここまでは完ぺきな筈だった。


でもさ、きいてよ、
とっくにアイツは対策立ててたみたいでさ。


お祈りした次の瞬間、私、○京天然温泉におっこちたよ。
ずぶぬれだよ。
せっかくのメモも全部ふやけちゃったし。
本日の薬湯、って書いてある看板、蹴っ飛ばした。
べつにいいじゃん、あとで直せば。


ここでね、
いらいらしてきたから一個目の約束やぶっちゃった。


ラバージのまねして水のなかでぐるっと一回転した。
ごめんなさい、すこし罪悪感はあったんだ。
耳の奥、かたつむりが悲鳴をあげてるのがわかったから。


それでも
オンナってさぁ・・・、いざというとき根性でるよね。
力づく・・・いやこの場合心づくか、まぁいいや。
・・・で、衣装屋まで自分をとばした。


3秒くらいしてから、つんのめって転んだ。
ずぶぬれのまま。
大成功だった、天井から七色のチュールがぶらさがってる、
間違いなく衣装屋さん。


こうなったら格好なんかかまってられない、
とりあえず、びしょびしょの制服を申し訳程度にしぼった。
でもね、問題はさらに続くんだよ、


急いでショッピングモール側にいこうと顔をあげたら、
困ったことに、ショッピングモールなんかなかった。
流石だよ。手を回すのがはやいんだから。


いよいよ私も焦り始めた。


それでね・・二個目の約束もやぶっちゃったんだ。


(中略)
しょうがないじゃない、作業に集中したかったんだもの。


もう一回、
目を閉じて、
深呼吸して、
ぐるっと一回転。


こういうときの自分の集中力には結構自信ある。


目をあけたら、
もちろんそこにショッピングモールはあった。
最初からあった。そういうことになった。


右に折れて、平成ギャラリー。


腕時計をみる、
12:30、
こんなことだろうと思ってた。


ここで軽くまばたきをして、軽やかに一回転、
次の瞬間、時計の針は 10:30 をさす。
余裕余裕。


気分がのってくる。


おっと、ここで平成ギャラリーまで消されたらたまんないからね、
もう約束は、振り切って、
○○○、ごめんね、
寝てる方の自分に寝返りをうつように頼んだよ。
体からぬけたら、さっさとギャラリーまでチャリで飛ばせって。


安心したら急に肌の感覚がもどったのか、
少し寒いことに気づいた。
スカートから水がしたたり落ちてる、
薬湯はすっかりつめたくなってて、
体が、ぶるっ、てふるえた。


ぼーっとしていたら
見慣れたサーモンピンクのチャリが交差点に登場。
あぶないあぶない、
「私」の顔は見ないようにしなきゃ、
急いで振り返って平成ギャラリーまで走る。


看板が見える、


ガラス戸をあけようとして手を伸ばす、と、
背中の方から、


どん、


て大きい音がして一瞬ビクッとした。


そんな音に動揺してる暇はないから
もう一度手をのばす、


うまく取っ手がつかめない、
半分泣きながら手をのばしたら、


今度は取っ手がなかった。


自分が焦ってるのがわかった、
ぽたぽた垂れてるのが涙なんだか薬湯なんだかわからない。


交差点の方がざわざわしてるのが聞こえてきて、


私は、
○○○、あなたとの約束をもうひとつ思い出した。
絶対にやぶっちゃいけない、約束。


頭の中がぐちゃぐちゃになっちゃって、
私には、もう、
自力でプロッキーの色を思い出すことくらいしか、できなかった。


交差点の方で救急車の音がする。

パソコンのディスプレイが壊れちゃったみたいに、
周りの風景が、
ぽちぽちセピア色にかわってく。


「先生・・・」


口から思いもしなかった言葉がこぼれる、


はやく学校に帰ってあげてください。


○○○はね、先生がいないと家に帰れないんだ。


帰りかたがわからなくなっちゃったんだ、


私は一番の仲良しである彼女を助けてあげたいと思った。


毎晩毎晩、私の記憶の中に生きている彼女に会った、話した。


どうにかして解決の糸口をみつけようと、努力してきた。


何冊も本を読んだ。


○○○の心をなおしてしてやろうとおもった。


どうせ人の考えてることなんて信号の組み合わせみたいなものなんだから。

頭のいい彼女はすぐにたくさんのヒントをくれたよ、

先生をおっかけろって言ったのも、彼女だ。


それでも勘違いによる、勘違いのための、勘違いな試みは完敗したみたい。
 


○○○、わらってね。


私も家にかえれなくなった。


でもひとつ収穫があったよ、
私は先生のことがすきだったみたい。


 

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